GoogleはAgenticコマースの仕組みで小売マーケットへ切り込もうとしています。この仕組みが完成系に近づけば、ECの雄、Amazonのお株が奪われてしまうかも知れません。Agenticコマースが何を目指しているのか、まずは日経新聞の記事をご覧ください。
出所)「米国でAI使った「アマゾン飛ばし」 GAPは買い物エージェント導入」日本経済新聞 2026年4月9日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN30ALM0Q6A330C2000000/
GoogleのAgenticコマースはAgent to Agent Protocol (A2A)とA2Aの応用版として考案されたAgent Payments Protocol (AP2)によって動いています。この仕組みはAgenticコマースを推進するためにGoogleが提唱し、数十社のIT企業やカード会社などがパートナとしてコンソーシアムに参加しています。
https://cloud.google.com/blog/products/ai-machine-learning/announcing-agents-to-payments-ap2-protocol?hl=en
この仕組みは数種類のAgentがユーザの取引意向を汲んで適した商品をリコメンドし、カード決済まで一連の流れをサポートします。Agentは少なくとも3つの証明書(Mandate)を互いにやりとりし商取引を完結します。
購入意図の証明(Intent Mandate): ユーザーの抽象的な意図をエージェント(Agent)が委任状として作成
提案の受領(Cart Mandate): 加盟店エージェントが商品を提案し、署名済みのカート(Cart)情報を返信
決済権限の委任(Payment Mandate): ユーザーが最終決定し、安全に支払いを委任
AIは個々の消費者が欲しいものを引き出して、実際の商品と紐付けてくれます。そもそもAmazonや楽天市場が提供している機能をAIが代替する可能性が出てきます。ここでビジネスチャンスを得るのは強みのある商品を持っているサプライヤやAmazonカードや楽天カードの「経済圏」によって押さえつけられているカード会社などが考えられます。
アメリカのカードインフラにはOpenAPIの仕組みがすでに導入されています。つまりAgentはカードインフラに備わるAPIへアクセスしてMandateを引き渡すことによってカード決済を完了することができます。カード会社も小売企業もAgenticコマースの世界へ踏み込むハードルは比較的低いといえます。Fintech分野の有力ユニコーンの一社、Stripeはカード決済のAPI化に目をつけてビジネスを急速に拡大してきました。もともとカードビジネスをやっていない会社でもStripeのAPIインフラを使うことによって面倒で大規模な開発投資をしなくてもカード会社としてビジネスできる仕組みが出来上がっています。
SpripeはGoogleと競合するOpenAIとの共同開発でAgentic Commerce Protocol (ACP)というプロトコルを発表しています。VISAやMastersなど大手カード会社はGoogleのコンソーシアムにもOpenAIのコンソーシアムにも両睨みで参加しています。どちらの勢力が優勢になっても絶対にチャンスを逃さない戦略です。
東京デジタルアイディアーズ(TDI)はそれぞれのAgentの動きを確かめるために、Googleが公表しているデモアプリを実際に動かしてみました。Agentは消費者のニーズを確認してMandateを作ります。最終的にPayment Mandateが作成されるとAPIを通してカード会社の決済システムへ情報が連携される仕組みになっています。
アメリカのカードシステムはAPI化が進んでおり、通常のケースでもGoogleやOpenAIの目指すAgentic Commerceをダイレクトに接続することができます。日経新聞が紹介しているGAPのケース、それにOpenAIと提携するSpripeのサービスでは実用レベルで利用可能なものが出現しています。他方、日本市場では加盟店からの接続にCAFISと呼ばれるカードネットワークが利用されるケースが多いので、AgentからのMandateを受けとる仕組みが普通は存在しません。日本のカードビジネスがAgenticコマースへ一歩を踏み入れるには、まず足元のインフラを整えるところから始める必要があります。




